金沢屋 粕屋・久山店
福岡市東区若宮 2018年05月開業 インタビュー時期:2019年7月
今回は、ご夫婦にお話を聞きたいと思います。独立しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
以下それぞれのテキストの色 (粕屋・久山店オーナー:黒 オーナー奥様:ピンク)
(粕屋・久山店オーナー)見ての通り、私は外国人なんです。生まれも育ちも南米ペルーで、15歳までは向こうで育って、親の仕事の関係で福岡に来てからは27年になりますね。それでそのまま日本で就職したんですけど、初めての職場は、父親と同じ会社の水道メーカーでした。でも、リーマンショックで会社が倒産したんですよね。そこからはいろんな仕事をしましたね。
だけど最終的に金沢屋を選んだのは、経済力とライフバランスのことを考えてのことです。結局、忙しすぎて子どもに毎朝会えないとか、夜帰ったら寝ているとか……日曜しか子どもに会えないのが続くと、「これはちょっと駄目だよね」となりますよね。どんなに会社を変えても、根本的にそれは変わらなかったんです。
なんか、経済力を得られても拘束時間が増えるとか、逆に、収入は減るけど時間は増えるとか……それだとバランスが取れないことになっちゃうんですよね。それで、ちょうど40歳になる年に、新しいことにチャレンジしようかという感じで始めました。
40歳からの独立は不安はありませんでしたか?
そうですね、でも一回だけの人生なんでチャレンジしたいですよね。初めての会社がいきなり倒産して、「私は次の所に勤められるのか?」って不安があったんですけど、いろんな会社で働いてみると、「意外に自分は出来るな」って感じてきて。40歳になって違う会社に勤めても結局同じですよね? だから、個人事業主というか手に職をつけてできる仕事はないか?って探してたら、フランチャイズフェアをやっていたので行くことにしたんです。
その時は、妻の方が独立を考えてたんですけど、一旦は考え直すことにして、その2年後に「やっぱり私が個人事業主にならないといけないんじゃないか?」って思うようになったんですよね。そしたら、そのタイミングでもう1回フェアの案内が来て。
そこで、気になっている会社は出展していなかったので、他の会社をいろいろと回ることにして。そしたら、金沢屋を見つけたんですけど、「襖・網戸の張り替えは自分でDIYやってたからこの仕事ならできるんじゃないか」「コンビニじゃなくて、お掃除じゃなくて、こういう系統が一番自分に合っているんじゃないか」って思ったので、深く話を聞いた感じです。
それで、新しい会社に入ったばっかりだったんですけど、すぐに契約しましたね。
それから、すぐに金沢屋を始めたんでしょうか?
いや、さすがに紹介で入った会社だったので、3ヶ月で辞めるのはちょっと失礼過ぎて、延ばすことにしました。フランチャイズフェアが9月だったので、翌年の2,3月のキリの良いときに退職して、4月から金沢屋をスタートすることになりました。
ただ、電話線の開通に手間取って、少し時期がずれたんで実際に開業したのは2018年5月のゴールデンウィーク明けになってしまいましたけどね。
(奥様)3月いっぱいで2人とも正社員を辞めて、4月から金沢屋をスタートしたんですけど、その時点で1ヶ月分の生活費が無くなってしまっていて。スタートからマイナスでしたね(笑)
ただ、1回だけ、私たちのエリアのお客様が本部に問い合わせてきた案件があって、それは開業前でしたけど、本部から受けて仕事させてもらいました。多分その方は、チラシじゃなくてネットで探してきたんでしょうね。
開業前にお仕事を受けたんですね。SV(スーパーバイザー)もいない状態で、見積もりなども行ったのでしょうか?
そうですね、まだ本当のお客様の対応はしたことが無かったですけど、「まあできますよ」って自信を持って言いましたね。意外に難しくなかったよね?
いや、私は大変でしたよ!(笑) 私が見積書を作る担当なんですけど、前職は貿易事務でメールとか電話でやり取りするのが基本で、対面で目の前で見積もりするのは初めてだったんですよ。書類も今はパソコンの時代じゃないですか? だから手書きに慣れてなくて。緊張のあまり、普段はしないような凡ミスをしたり……
僕ら、もともとは工場で働いていて、営業じゃないタイプなんです。お客様との接触が無いような仕事をしていたんですよね。妻の方も、来客時にお茶を持っていくぐらいでしょうから。そういう意味でも挑戦でしたね。
実際に開業されてからもそういった苦労はありましたか? またそれに対して工夫されていることはありますか?
営業経験がない私たちは、お客様への提案で結構苦労しましたね……。はじめはお客様にただ喜んでほしくて、安い物ばかり売っていたんです。でも実は、それって私たちの価値観であって、お客様が本当に望んでいる商品じゃないことがありますよね。やっぱりお客様によってニーズは違ってくるんです。
そうなんです、お客様によって価値観はそれぞれなので、ウチの商品や材料を説明した上で、お客様に決めてもらう。そのためにも、「これからどういう風に生活したいか」というのをお客様にちゃんとヒアリングするようにしたんです。
お客様は年配の方が多いので「あと10年生きれば良い方じゃない」とよく言いますけど、そういう考え方じゃなくて「これからの10年楽しく過ごそう」って思って欲しいんですよ。だから、お金の面だけ考えるんじゃなくて、好きな柄とか気にいった紙質の襖を貼って欲しい。ただ、最終的に決めるのはお客様です。
私たちは、ただ説明するんですよ。「こうしておけば、こうなりますよ」って。ライフバランスとかこの部屋の雰囲気とか。
でもまだまだ難しい面が多いので、毎回話し合いながら改善するようにしていますね。
粕屋・久山店は2018年度の金沢屋新人賞を受賞されていますね!
新人賞に選ばれたのは2店舗ありましたね。ウチは開業したのが5月なので、2018年度の新人賞を取るには、営業期間が短いんですけど……年間トップ10に入るようなベテラン勢とは違って、何か理由があって選ばれていると思うんですけど。
ただ、開業してからはモデルケースのようになりましたよね。ゴールデンウィーク明けに開業して1週間しかしていないのに、モデルケースぐらいの金額まで行って。どうしてそうなったのかって不思議ですけど、「腹を決めるといろんな人が助けてくれる」っていう事なのかなって。「これで食べていこう!」という2人の決意があったからじゃないかと、今振り返れば思いますね。
そうですね。ただ「やりたいな」という軽い感覚だと、多分そこまで行かないと思うんです。大体皆さんは一人で開業しますけど、僕たちは2人で同時に会社を辞めて、金沢屋を始めたので余計に勇気がいるんですよね(笑)
ご夫婦で、仕事内容は分担しているのでしょうか?
主人は漢字が書けないので、基本的に書くのは私ですね。見積書とか、パソコン作業も私です。私は、施工でいうと下処理しかできないので、主人が施工をメインにしています。その辺の役割はきちっとしていますね。18時以降は、子どもたちの面倒を見るために私は仕事を抜けて、そこからは別行動です。
見積もりに行くのは2人ですけど、その他の経理関係は妻が見てくれるので、私はもう施工だけ。他のオーナーさんは一人で全部やってるので、大変だと思います。
あと、一応ビフォーアフターなんかの写真を撮って、チラシに載せたりしてるんですけど、そういう写真を撮るのも私です。知らない人は、写真を入れていると安心するようなので。だから広報担当という感じ。
そうそう。お客様って結構不安に思っているんですよ。職人さんって、頭にタオルを巻いて汚れた服を着ているようなイメージらしくて、僕たちが行くと怪しんだりすることもあるんです。「誰が作業するんだ」とか「若いからできないでしょ?」とか……今まで頼んだことがない業者だからって、すごくテストされるんですよ(笑)
「業者=悪徳業者」と思ってる人も、結構多いんですよね(笑)
お客様の信頼を得るために、何か意識していることはありますか?
ウチは5月に開業して、7~8月にはリピーターさんがいたんですけど、私たちとしては、当たり前のことを当たり前に……「当たり前」って何ですかね? お客様が来てくれるってことは、私たちの仕事に満足しているということですよね。ただ、リピーターさんがつくのは思ったよりも早かったなと思います。
僕たちは業者だけど、業者とお客様の距離感を縮めるためには、仕事の話はもちろん、それ以外の話もするようにしています。お客様一人当たり大体2時間くらいかけるんです。最初の5月は言われた通りで何もわからない状態だから数をこなすために20分程度で帰ってしまっていましたが、それでは印象にも残らないし、リピーターにはなりませんよね。
お二人の細やかな配慮が新人賞につながったと感じるのですが、
実際にかなりの短期間で成し遂げたことにコツなどはあると思いますか?
私達は特に何か変わった事をしているわけではないんですけどね。多分当たり前の事をしているんですが、5月にスタートして7,8月頃にはリピーターがきたので、私達の仕事に満足していただけていて信頼していただけているからなのかなと思います。
そういった信頼のためにお客様との距離感を縮めています。業者なので仕事は仕事として勿論話さなければいけないけれど、それ以外の話もたくさんします。お客様一人一人に時間をかけてみよう、ということ二人で決めたんです。
時間をかけるためにチラシの撒き方を変えましたね。チラシを撒く枚数を小分けにするようにしました。一気に撒くと反響も一気に来るので同時期にお見積もりやお問い合わせが集中してしまうため時間を取るのが難しくなってしまうんです。
地域の特性によって色々違う部分もあるとは思うんですけどね。
だから私たちは「なんで反響が無いんだろう?」とか「リピーター来ないんだろう?」というのを1回1回見直していますし、チラシの内容自体も結構変えたりしていますね。
はじめはフリーダイヤルを使っていたんですが、それを市外局番の通常の番号にしたり、携帯番号を載せてすぐに対応出来ますという部分を押し出したり、地元で安心の店という小さい副題を付けたり、自分たちの写真を載せて家族でやっていますということをわかるようにしています。
お客様との会話の中で私たちを選んだ理由として「こじんまりしているから」とか「家族でやっていて安心だから」という声があったので反映させていただいて。
お客様によく言われるのは、電話をするときに凄く勇気が要るそうなんです。なので電話の対応が女性なのも安心するのかもしれません。
お陰様で今年の5月は売上も反響も去年の5月の3倍です。
すごいですね。とても順調に進まれていますが、今感じている課題はありますか?
嬉しい悲鳴ではあるのですが、反響が良すぎると手が回らないんです。依頼が多すぎると見積もりに行っている時はここの店舗に誰もいないですし、作業が出来ないのでとにかく建具が溜まっていくだけになり、そうするとどうしても夜18時に帰ってきて夜通しで張り替えを進めていく。寝る時間が無くなってしまうんです。
今年の5月は去年の3倍だったので忙しさが繁忙期の12月と一緒だったんです。
去年は7月の方が忙しかったので今年の7月が怖いです。
ただやっぱり反響がある時に一番撒かないといけないんですよ。アリとキリギリスじゃないですけど働かなきゃいけない時期があります。どうしても季節の影響などで忙しい時期とそうでない時期がありますから。
それも課題のひとつですね。
トップオーナー達がよく「3年目からリピーターが増えて楽になるよ」と言っていました。なので1年中安定して、波を無くすようにしたいです。
金沢屋としてお仕事をしていて感じるやりがいはなんですか?
ランチですかね(笑)
忙しい時は本当に何時に食べられるかわからないんです。暑いから弁当を車の中に置いておくと悪くなってしまうのでいつも外食なんですけど、どこで食べよう?と「今日は時間に余裕があるから何か甘いものを食べよう!」とか、もちろん忙しいとなかなか出来ないんですが、普通の会社員よりはそういう事が出来る自由があります。
あとは子供達に自分達の仕事を見せられるという事です。子供を保育園に送ると「仕事頑張ってね」と言うんですよ。
息子は最近仕事の予定を見て、「今日何件ある!」とか「あぁ、襖?それは難しいよね」とか言っていますね。
任天堂スイッチが欲しいので「今日いくら稼いだの?」「今日は任天堂スイッチ3つ稼いだ」「うわぁ凄い!」って言ったり(笑)
でもそれもお客様のおかげだから、お客様からお金をいただいたら「ありがとう」と言いなさい、これで僕達は食べているんだよ、と必ず伝えています。
子供とのことでいえば、会社員時代には忙しくて全部妻にお任せでしたが、今は毎日子供を送り迎え出来ます。
今後の目標はなんですか?
こう言ってしまうと結構怒られちゃうんですが、目標は何か?何のためにやるのか?って聞かれると、正直お金を稼ぐためなんですよね。お金を稼ぐ事ばかり考えています。ただお金を稼ぐのが目標なんであれば途中で終わらずに稼ぐ、ということですね。
今のままでもずっと続けられると思っていますがB型で飽き性なのでいろんなことをしてみたいですね。
以前からやってみたいと思っているのが飲食店です。
今日もランチの時に話していたんですけど、素敵な古民家があって、古民家なのにカレーを出しているんですよ(笑)そのギャップも面白いし、器とかにもこだわっていたり。普通の和室で普通にカレーを出しているから、これだったらペルーでも良いんじゃない?だとかそういう話を良くしていますね。
でも私は料理出来ないし、お姉さんにやってもらいたいんですが、実際私にお金が無いとその話に彼女を乗せられない。彼女の保証をしないと多分乗ってくれないと思うので、そういった意味でもお金を稼がないとですね(笑)
なるほど(笑)最後になりますが金沢屋に入ってよかったですか?
よかったです。
私は以前いた職場でパワーハラスメントとマタニティハラスメントがありました。次に転職した先は経営不振になったんです。経営者が理念を持たずに利益だけ追いかけているような会社だったんです。結局私は経営者じゃないので、理念も立てられないです。でも自分達が金沢屋をやっていたら少なくともどっちの方向に行くかは自分達で決められるんです。
それとあとはどういう人を仲間にするかしないかというのも私達に権限があるので、自分達の船が何色に染められるかというのは私達で決められる。これは個人事業主の良い所です。
金沢屋の良い所は職人が全国にいて、それぞれのいろんなノウハウを持っているからそれをシェアし合えます。だから悩みがあった時にすぐ聞いてくれるメンターさんがいて、そのメンターさんがやっている通りの事を真似してやったら私達は上手く行いました。
もし私達が知らなくて張り替えだけをやりますといったら、お客様をどうやって獲得するのか、どうやってリピートに繋げるか、どうやってデザインをすれば良いのかがわからずうまくいかなかったと思います。
メンターさんの説明で私達は大きく成長することが出来ました。当たり前の事を言っているかもしれないけど、それぞれのオーナーがどういう風に受け取るか、やるやらないは本人達が決めますが、私たちはやるしかないんです。やってみたら変わるかもしれない。その結果、変わった。
フランチャイズだからこそ「一緒に頑張ろうよ!」と言って私達の苦労した所を苦労させないように、「こういうのがあるからこういう風にした方が良いよ」とどんどん教えて、隣に他店がオープンしたら「わからなかったらコレしなよ!このチラシ一番良いよ。ここにこういう言葉を私達は意識して入れている。こういう風にしたら良い」というような事を、皆さんに苦労して欲しくないからどんどん教えてます。
だから金沢屋自体のレベルがどんどん上がっています。
メンターさんがどんどん勉強されて、メンターさんが惜しみなく皆に教えてくださっているから私も同じ事をするだけです。