金沢屋 宗像店
福岡県宗像市名残 2018年11月開業 インタビュー時期:2019年7月
金沢屋を始めたきっかけを教えてください。
父から受け継いだ、アミューズメントの機械をリース・販売したりする仕事を15年ほど続けているのですが、売上が右肩下がりになってきたので、「なにか別のことを始めないと」と思っていたんですよね。そんな時、高校の同級生(久留米店の川上さん)が金沢屋を始めたとFacebookに投稿してたのを見て、金沢屋を知りました。それがきっかけかな。
はじめは、何か始めるなら、自分でイチからやらなくちゃいけないって考えていたんですよ。だけど、川上さんの存在をふと思い出したとき「あ、そうだ、フランチャイズに加盟するという方法もあるよね」って思い立ったんです。
それから、川上さんがフランチャイズ合同説明会の講師をやると聞いたので、話を聞きに行ったんです。説明会に行ったのはその一回だけ。金沢屋のブースは出ていなかったんですけど、彼に直接、金沢屋について話を聞かせてもらいました。あと、説明会の前に彼の著書も読んで予習もしたんですけどね。
金沢屋を選んだ理由は、なんだったんですか?
僕には息子が3人いるんですけど、次男が自閉症なんです。川上さんの話を聞くと、金沢屋久留米店には障がいを持たれた方も働いているということだったので、「金沢屋の仕事だったら、ウチの息子も一緒に出来るかな」と感じたんです。話を聞いた時は無理かもしれないと思ったんですけど、もしも一緒に働けるならそれは良いなと思って、金沢屋にしたんです。なので、事業内容もそうですけど、実際に久留米店の川上さんがやっていることを聞いてから、興味を持った部分が大きいかもしれませんね。
他のフランチャイズは考えませんでした(笑) 川上さんの著書を読んで、仕事の内容はあらかた知っていましたし、彼は金沢屋の顧問もしているじゃないですか。だから間違いないだろうと。
あと、自分は地元で生まれて地元で育った人間で、その時たまたま宗像のエリアが空いていて……これはもう持ってこいだなと。地元の宗像で何かしたいという思いがありましたし。
開業されたのはいつ頃でしょうか?
去年(2018年)の11月の末です。開業してまだ半年くらいですね。
アミューズメント機械のリース業もやりながら、金沢屋の仕事もしています。金沢屋の仕事は、電話での受付や注文は妻が担当していて、見積もり・引き取り・施工・納品は自分が一人でやっています。
リースの仕事は、お客様の所に月に一度訪問するんですけど、いつ訪問するかある程度はこちらで決められるものなんです。だから、「熊本はこの日程、宮崎はこの日程」……という風に決めて働いているんですけど、金沢屋の仕事も同じように多少日程を調整できるじゃないですか? なので、2つの仕事のスケジュールを自分で調整しながら働くようにしています。ときどき、無理したりもしますけどね(笑)
今までのリースの仕事とは全く違う仕事のように思いますが、不安はありませんでしたか?
違うように見えますけど結構似ているんですよ。似ていると言うと語弊があるかもしれませんけどね。ゲーム機って、仕入れたものを自分でゲーム用に加工するんですよ。CPUやロムは外注に出しますけど、表立った所は自分で加工して、アミューズメント用の仕様にするんです。自分で手をかける、という意味では似ていますし、遊戯しているお客様と直接お会いできる、楽しまれている姿を見ることができる……というのが、金沢屋の仕事でいうと、「仕上がったものをお届けしたときに喜んでもらえる」ということなんです。「お客様商売」という点では、一緒かなと思っていますね。
あとは、営業の面でも似ているところがあるんですよ。リースの仕事も飛び込みで営業しているわけじゃなくてご要望があるお客様のところへお伺いするんです。そういう点では金沢屋と一緒。導入してくれているお店側も、金沢屋のお客様と同じく年配の方が多いので「雨が降っているのにわざわざありがとうね」と言ってくださいます。お陰様で、お客様対応で苦労したことは一度もありません。ご年配相手に仕事をするというとことは、リースの仕事で培った力なのかもしれないなと思います。
そういうわけで、金沢屋の仕事も比較的抵抗感なくできていますね。ただ、技術面では多少苦労しましたけど。
技術面での苦労とは、どういったものでしたか?
開業したのが11月末で、ちょうど年末の繁忙期の真っ只中でした。開業して、もういきなりドーンと忙しくなったという感じだったんですよ。
開業したての頃って、スケジューリングのコツもまだわからない状況だったので、仕事を受けるだけ受けていると、睡眠時間が足りなくなってしまって……。11月末からクリスマスの後くらいまでは、睡眠時間2時間半とかでした。毎日夜中の3時頃まで作業して、5時半に起きて……という生活をしていましたね。
あと、お客様対応でもまだ力不足な面があって、その頃はお客様に上手に商品をご提案することができなかったんですよね。当時は3000円の商品が注文のメインだったのですが、今になって考えると、そのお宅や環境に合わせてもっと良い提案ができただろうなと感じます。お宅に伺っても、お客様の方が知識を持っていることもありましたからね。
それでも、初めの頃は集客に困ることはありませんでした。開業してから1月までは、年末の依頼の名残でいくつか仕事がありましたから。数か月たった頃から3月頭までは全然でしたけどね。忙しい時期との差が激しかったので「本当に大丈夫かな」と少し心配になりましたけど、それも今思えば、年末に手が回らなかったものは交渉して年明けにしてもらったりすることもできるんですよね。今年はちゃんとしようと思っていますよ。
開業当初から忙しかったのには、なにか要因があったのでしょうか?
張り替えを頼みたくても「どこに頼んで良いのか分からない」と、困っていた方が多かったからじゃないでしょうか?
お客様って基本的に新聞を取っていて、折り込みチラシを見てから電話をかけてくれる方が中心になると思うんですけど、これまでは張り替えたい時にその情報が手元に無かったんでしょうね。みんなが修理をしたくなる年末前の11月に、開業したてのウチのチラシがポンと入って来たもんだから、それでこぞって連絡をくれたんだと思います。やっぱり「どこに頼んで良いか分からなかった。前に頼んでいた所は閉店してしまっていて……」という感じの方が多かったので。
金沢屋で説明を受けたときにも「後継者が不足しています」と言われていたので、こういう事かと実感しました。そういえば僕も、金沢屋を始める前は「網戸が破れた時はどこに頼むんだろう?」と思いましたからね。
僕は地元の商工会に所属しているんで、誰か知り合いを見つけてお願いできるでしょうけど、一般のお客様はそれが分からないじゃないですか。若い人だったらネットで調べたり、YouTubeを観てホームセンターに行って材料を買ってきて、自分で張り直せるかもしれませんけどね。
でも、お年寄とかインターネットに慣れ親しんでいない方は、そういうのが出来ないから本当に困られている方が多くて。この仕事をしていて良かったなと思うのは、そういうところです。困っているお客様の助けになることで、感謝されるということ。
実際には、自分で調べて張り替えるよりも、金沢屋に依頼した方が手間もかからないし、引き取りから納品まで、しかも綺麗にして渡してくれるので、安上がりだとは思いますけどね。
研修や、実際に現場に出た時の印象はいかがでしたか?
金沢屋と契約したのが5月だったんですが、研修はその5ヶ月後の10月で、研修まで結構時間があったんです。その間はやっぱり不安でした。「全然知らない業界で、本当にこんな事が出来るのか?」って。網戸ぐらいは張った事がありましたけど、障子や襖は張ったことが無かったですし。
それで、さっき話した川上オーナーに「久留米店でちょっと勉強させて欲しい」とお願いして、お盆明けから9月いっぱいぐらいまでの1ヶ月半程度、久留米店に行って勉強させてもらったんです。
始めは張り方を教えてもらって、あとは従業員の方に一緒についていって外回りを経験させてもらいました。久留米店での勉強が終わってから本部の研修を受けたので、研修は確認って感じですよね。「あ、こうなんだ」って。
久留米店が終わってから本部研修まで1ヶ月半ぐらい空いていたので、忘れてしまっていたことや理解しきれていないところもあったので、やっぱり研修を受けて良かったなと思いました。僕は特殊なケースなので、比較的苦労は少ないんじゃないかな。他の人よりも、開業前に現物に触れる機会も多かったですしね。
それでも、開業直後の繁忙期は時間との戦いでしたよ。さっき話したように、睡眠時間を削って働いたりしていましたから。それからは、発注ひとつにしても段取りを考えるようになりました。例えば、今日14時に襖の依頼が来たとしたら、「昨日の17時に受注した分も合わせて発注したら良いよね」とか考えるようになりました。
スケジュールが逆算できるようになると、無理に当日引き取りに行かなくても良くなるんです。電話が来たタイミングで、発注した分がいつ届くか、というのも計算できるので「じゃあ、〇日の〇時に引き取りに行きますね」って言えるようになります。そうすると、お客様の家に建具が無い時間が少なくて済むから、お待たせしないで良くなりますよね。張り替えスピードはまだ遅いのかもしれませんけど、スケジュールの部分で調整できればと思っています。
ご家族にもサポートしてもらっているとのことですが。
妻には電話受付とか、本当に人手が必要なとき、あとはお客様のお宅に居てくれた方が良い時についてきてもらっています。開業当初は、母も障子洗いを手伝ってくれましたね。誰かが剥がしてくれれば、あとは乾かして張るだけの状態になっているので、それだけでも全然作業効率が違います。やっぱり年末は障子が多かったので、それはとっても助かりましたね。剥がす作業は知識が無くても手伝ってもらえますから。
妻は結婚する前にメーカーの事務や秘書をやっていたので、何も教えなくても電話応対はしてくれるんです。会社で業者さん向けの電話も取っていましたから、すぐにできちゃうんですよね。それもすごく助かっています。
妻はお客様受けも良くて、お宅に行ったら「電話の人、奥さん? 感じが良いよね~」とか「奥様にもよろしく伝えておいてね」と大体のお客様に言われるんですよ。「電話した時に男が出たらどうしようかなと思っていたけど、出た途端に女性だったから本当に安心した」とか言われて。そういうのを聞くと、結構妻に助けられているのかなと思いますね。
開業されて半年ですが、今の段階で感じている課題はありますか?
やっぱり、まだ自分から提案するということが充分にできていないと感じますね。お客様のかゆい所に手が届く提案……ですよね。他のトップオーナーさんみたいに、リフォームの仕事などは全然足りていないなと思いますし、リフォームの仕事を受けられるだけの仲間が増やせていない現状もあります。
近所の大工さんにも「なにか仕事があった時はお願いします」って事前に言っているんですけど、まだ実施には至っていませんね。そういった仕事も、一度やれば何となく工程が分かると思うんですが、まだ実践したことがないので知識も経験も無くて、上手にお客様に伝えられないというのもあります。
例えば今って、ヘリ無しの「琉球畳」というものが流行っているんですけど、それをお宅に入れるにはどうしたら良いとか、技術的に何が必要だとか、そういった具体的な説明もやっぱり経験が無いから上手くご提案できなかったり……。
台風の被害に遭われたといった時に、火災保険に入られていたなら、それを使って修理できますよね。そういったお客様にとって有益な情報をお伝えできるようになりたいとも思いますし。いざというときに「お家の困りごとなら金沢屋の宗像店さんだな」と思っていただけるようになりたいんですよね。まだ、それが実現できていないから、これから環境を整えたり知識を付けていかなければいけないなと。それが課題だと思っています。
知識が増えて、やれることが増えてくれば、仲間も増えますよね。そしたら仕事も増えて、お客様にも喜んでいただけて、売り上げも上がっていくんでしょうけど、それくらいになってくると、今度は人を雇って自分の時間を作ったりしたいですね。
遊びたいわけじゃないですけど、1人でやっていると、例えば僕が明日バタッと倒れたらお客様に迷惑がかかってしまうので、そういった面でも一緒に働いていただける方を増やしたい。その辺も、課題になってくるのかなと思います。
他にも、これから気を付けていこうと思っていることはありますか?
リフォームの仕事を増やすことでしょうかね。開業したばかりの頃は繁忙期で、業者さんを開拓することができなかったんですよ。「いずれやろう」「注文が入ってから、探した方が良いかな」と思ったりしているうちに、時間が経ってしまったんです。まぁ畳屋さんはすぐに見つけることができましたけど。その後、クロス屋さんや大工さんも少しずつ。それでもまだ、仲間が足りないと思っています。
大型のリフォームはまだ受けたことが無いんですけど、クロスも業者さんと一緒にやりましたし、小さいクロスの仕事は自分でやりました。あと、畳は結構頻繁に受注いただいています。
クロスを自分でやろうと思ったのは、「壁紙そっくりさん」という研修を受けて壁の知識を学んで、そしたら「壁紙も“張る”という意味でいうと襖と一緒だから、自分にも出来るんじゃないかな」と思いまして。まずは狭いトイレとか、壁の一面のみとか、とりあえず自分の家で練習したりしていましたね。小さい面積のプチリフォーム的な張り替えは自分でやりますけど、大きなものになると本職の方にお願いするようにしてはいますね。
課題と重なる部分もあると思いますが、今後の目標を聞かせてください。
ここ2~3年でエリアを拡大して人を増やして、金沢屋売り上げのトップテンに入りたいですね。全然追いつけていないですけど(笑)
あと、張り替え以外にも事業を多角化して、リスクヘッジしていきたい。これから消費税も上がるし、オリンピック後とか不安がいっぱいありますけど、この仕事はお客様と直接取引するので、家庭の懐事情の影響をもろに受けますよね。なので、いろんなチャンネルがあった方が良いと考えています。
長い目で見ると、子供達が成人するまでは一生懸命働いて、60歳以降はゆっくりと時間を作って、やりたい事をやっていきたいです。
ウチは田んぼとかもやっているんですよ。この地域が過疎化で若い人もいなくて、農業の担い手がいないんですよね。だから僕も小さい頃は親父が兼業で農業をやっていたんですけど、もう全然やらなくなって、今は農家の方に貸しているんです。貸している方も高齢になってきて次世代の担い手がいなくなってきているので、そういったこともやりながら。40代後半くらいからは、農業もちょこちょこ勉強しながら、金沢屋の仕事をやっていこうと思っています。
金沢屋の仕事でのやりがいはなんでしょうか?
やっぱりお客様に商品をお納めした時の笑顔。「わぁ~綺麗になった。部屋が明るくなった!」と言ってもらえた時が一番嬉しいです。
意外と皆さんが想像しているよりも、綺麗になった感覚ってあるんですよ。いくら見本で確認していても、面積が広いとそれなりに変わって見えるんです。
見本を見せて「この色だとちょっと暗いかな……」ってお客様が言っていても、「これでも全然明るくなりますよ。この面積だからこの暗さですけど、もっと白い紙だと明るくなり過ぎちゃうから、これくらいで抑えられた方が良いと思いますよ」って、逆に抑えることが多いんです。クロスなんかは特にそうですね。
だから張り替えた時、「明るくなったね!良かった、これでちょうど良いよ」と言っていただけます。「あんたの言うこと聞いておいて良かった」みたいな感じ(笑) それはやっぱり嬉しいですよね。
これから金沢屋を始める方に、アドバイスなどがあれば教えてください。
僕は同期の方にも、「商工会に入った方が良いよ。そしたらもう簡単に横の繋がりで業者を捕まえられるよ」と言っているんですよね。
「商工会に入っています」と言ったら、お客様の見る目もちょっと違うような気がしますし。商工会に入ると顔見知りが増えるじゃないですか。ふと雑談をしているときにでも「~~さん知っている?」とか聞かれたとき「あぁ、知っていますよ!」というと、どんどん繋がりますからね。地元で商売するには、横のつながりがあった方が良いと思いますから。