金沢屋 金沢屋 仙台青葉・宮城野店
宮城県仙台市太白区 2017年10月開業 インタビュー時期:2019年3月
独立して、金沢屋をはじめられたきっかけは?
自分で何かやりたいなという思いが昔からあったんです。でも手に職が無くて、そんな自分でもできる仕事はないかと考え、ずっと探していたんです。あるとき、FC(フランチャイズ)だと研修期間もあって、教えてもらったうえで独立できるんだということが分かったので、そのなかでも自己資金を抑えて始められる事業に目を付けていました。
そんなとき、金沢屋のホームページを見て説明会に行くことにしたんです。周囲からは「そんな甘くないよ」と言われていたんですけど、独り身ですし別に失敗しても良いかなと思っていました。そんな莫大な借金抱えるわけでもないし、返せるくらいの借金だったらやってみようかなと。金沢屋に決めたのは、自分でスケジュールを組んで、自分のタイミングで仕事がコントロール出来るというところ。ちょっと甘い考えなのかもしれないですけどね(笑)
あとは、昔から物を作るのが好きだったんですよ。たとえば、プラモデル作りから始まって、家の中をペンキで塗ったり、ちょっとした所だったらクロスも自分で貼っていましたし。自分で言うのもアレですけど、少しは人並みには手先は器用かな。それに知り合いに職人が何人かいて、ずっと羨ましいなと思っていましたから。なので、自分に合っている仕事かなと。
前職は、物流関係とのことでしたが、全くの異業種・異業界の金沢屋に入るときハードルを感じませんでしたか?
前職は違いますが、多少知識があったから特にそうは思いませんでした。友達のクロス屋さんに自宅のクロスを貼り替えてもらったときにも「あぁ、こうやってやるの?」とかって教えてもらったりして、知識がゼロではなかったんですよね。なので、やっていける気はしていました。
開業されたのはいつ頃でしょうか。
2年前です。2017年の10月末。本当はもう少し早めにやりたかったですけどね。ずっと金沢屋があるというのは知っていたんですが、前職が忙しくて。自分の気持ちにいつ踏ん切りをつけるかを迷っていたのもあります。でも、本当は5月か6月ごろには始めたかったかな。
加盟すると研修期間が設けられるのですが、期間が決まっているのですぐに研修に行けるわけでもなくて。研修は1~2ヶ月のスパンで割り当てられますし、枠は早いもの勝ちなので、埋まっているとすぐには行けないんですよ。その受ける研修のタイミングによって開業時期が決まってきます。でも私の場合はそんなに待たされなかったですね。早いと2~3ヶ月、遅い人だと10ヶ月ぐらいになることもあるみたいですよ。
開業前、研修以外になにか準備されたことはありますか?
最近では「メンター制度」といって、既存店舗のオーナーさんが新人オーナーさんを迎え入れて研修する制度があるんですよ。でも、私が加盟した際にはまだありませんでしたので、開業2週間前から近くの店舗にいろいろ教わりに行きました。
研修はあくまで研修。使っているふすまも綺麗ですよね。でも、実際依頼されるふすまはお宅によって状態がバラバラじゃないですか。だから現物を見ておきたかったのもあります。あとは営業的な面で、見積もりからはじまって商品説明、受注までの流れも、その近くのオーナーさんに教えてもらいました。
フランチャイズにもいろいろな種類がありますが、他と比較しましたか?
仕事内容が自分の好きなことだというのもありますけど、やっぱり「自宅で開業できる」とか、加盟金も含めて他のフランチャイズに比べると低金額でしたから、そういうところが良いと思いました。ロイヤリティも売上比例じゃなくて一律なので、自分の頑張り次第でどうにでもなる。売上を上げようが、もちろん売上がなかろうが、本部に支払うのは同じ金額ですからね。
知り合いにコンビニを経営している人がいるんですけど、めちゃめちゃ大変だっていうんですよ。ルールもすごく厳しいし。建物を10年周期で改装しなくちゃいけないとかで、本部からの補助制度があるにしても資金面でキツイところはあると思います。あと、人手不足なんですって。成人した子供や、右腕になる人がいればいいんですが、夫婦2人で経営するとなると本当に大変だと思いますよ。それに比べて金沢屋は、1人でもできるので良いですよ。
2年前に開業したころの出だしはどうでしたか?
出だしは正直そんなに良くなかったです。他のオーナーさんに伺うと、多分良いみたいですし、周りのエリア3店舗は、開業直後の出だしがすごくよかったと聞いていたので、わたしも本部もそう思っていたんですが、意外に良くなくて。
出だしが良くなかった理由はなんでしょうか。
正直、今もはっきりとは……そこそこチラシも入れたので、チラシの数が問題ではないですし。ひとつ考えられるのは、エリア外の店舗だという点かもしれません。
普通、「金沢屋○○店」だったらその店舗は○○市にあるんですよ。でもわたしの場合は「青葉・宮城野店」なのに、住所が「太白区」なんです。どうしてもちょっと距離感があったのかも、というのが仮説。でも、とりあえずはここで頑張ってやってみようと思ってました。去年1年間ここでやってみたんですけど、自分で決めた目標、金額・件数・単価も含めて達成できたので、今年は本格的に宮城野区に移動してみようかなと思っています。いまは店舗を探している最中です。
開業当初は振るわなかったけど、去年はうまくいったんですね。それはどうしてですか?
張り替えだけじゃなくて、リフォームも提案できるようにしていたことかな。当たり前ですが、開業して5ヶ月くらいはふすま・障子・網戸以外の仕事は取れませんでしたよ。でも、今ではリフォームの仕事もあります。畳や壁紙、フローリングの貼り替え、あとフェンスの設置とか。
リフォームの仕事が取れない時期は、自信をなくしていましたね。でも、トイレのクロス貼りのような小さな仕事でも、1つ受けるだけで自信になるんですよ。小さな仕事から始まって、徐々に大きな仕事をいただけるようになりました。
一番初めのリフォームの仕事は覚えていますか?
最初、畳の表替えの問い合わせだったんですよ。それが、いざ現物を見に行って畳を引き上げようとしたら、床が腐敗していて。「畳だけで床がもっている状態だったら、床を新しく貼り替えた方がいい」と以前、畳屋さんから聞いていたので大工さんに連絡して状態を見てもらうことにしました。
そしたら床も新しくベニヤを張り替えなきゃいけないことがわかって……そうやって言っている間に、お客様の方から「ちょっとクロスもやりたい」と。そんなこんなで、追加、追加……と、廊下なんか全部フローリングを貼り替えて、ダイニングキッチンの床や壁も全部。こっちもビックリしましたよ(笑)
そのときに、職人さんとも色々と教えて頂き、どのようにお客様の要望に応えられるかという感触のようなものは掴んだ気がしました。それが自信になりましたね。
実績ができたということですね。
初めて頂くお仕事という事もあり、正直このお宅ではほとんど利益はなくて。こっちがちょっと損しても良いから、小さい仕事でもお願いしたり、「これからどんどん仕事があるので、またお願いします」っていう風にして、職人さんとの関係を作っていきました。職人さんとお互いにWin-Winで仕事をして、お客様にも喜んでもらって、次につなげる。
極端な話、そのときに儲けようと思わなかったからこそ、良い関係ができて、今の仕事があるのかも知れません。
職人さんとは、前から知り合いだったんですか?
近くのエリアのオーナーさんからの紹介でした。その方は神様みたいな人で、「ここはウチも使っている業者さんだから、紹介するよ」って惜しみなく教えてくれるんですよ。せっかく紹介してもらったのに、開業して5ヶ月間はリフォームの仕事が無かったんで職人さんとも会えないままで。いざ仕事ができたときに連絡したら、職人さんから「噂は聞いていたよ~」って言ってもらえて、それも自信になりました。
直接職人さんと話すと、気づかなかった事も気づけます。「こういう所を見てあげると仕事取れるかもしれないよ」っていうアドバイスも貰いますし、本当に日々勉強です。
新しい職人さんを探したりはしますか?
そうですね。クロスだと、そのオーナーさんから紹介された方と、私の友人とのどちらかにお願いしています。これは偶然ですが、知人が外構フェンスの工事ができる人だったんで、その方もたまに。
でも、偶然が重なるときってツいてるんですかね? たまたま障子の依頼を受けたお客さんに「ウチはこういう仕事ができますよ」っていうカタログを渡したらすぐに反響があって仕事になりました。「そうなの?ここもちょっと見てくれない?」っていう感じで。それで、リフォームの仕事もちょこちょこ増えてきたんですよね。
入口はふすま・障子・網戸の張り替えで、リフォームのニーズがあればお客様側から言ってくる?
ご提案もしますよ。やっぱり大なり小なり、家の中でも外でもいいんですが、皆さんお困り事ってありますよね。見積もりは無料なので、「どうせなら見積もり出してみますか?」って。
あとは、お宅にお邪魔するときに、畳が色褪せてささくれてたのに気付いたら「畳は何年くらい張り替えてないですか?」と聞いてみて、「もし張り替えるのであればこういう商品もありますけど」って提案します。
築40年、50年になると土壁がもろくなってきて、「土が落ちて大変なんだ」っておっしゃるご老人がいるので「クロスにしちゃった方が楽ですよ」と提案したり。
築年数が結構経っているお宅に訪問する場合は特に、畳や床、壁なんか「ベコベコしてないか」「ゆがんでないか」って意識しながら見るようにしています。直接「ちょっと気になっている事はないですか?」と聞いて、あれば見積もりをさせてもらって、金額が合えば仕事をいただくという流れが多いですね。
この辺りは古い家が多いんですか?
昔からの家もありますし、新しく整備されている所もあるんですけど、大体依頼をもらえるのは築30年。築20年くらいだとまだ依頼はないですね。
反響率という点で、何か季節以外で変化が見られることってありますか?
天候が良いと、チラシの反応もいい気がしますね。例えば、雨の日に張り替えのチラシが入ったら「あぁ……そうか」と置いといちゃうんですけど、天気の良い日だったら「あ、張り替えのチラシだ。じゃあ問い合わせしてみようかな」ってなるような気がします。気持ち次第だとは思うんですけど。やっぱり天気が良くて暖かいほうが、反応が良いですね。
あと、ふすまと障子も張り替える時は外しちゃうので、その分隙間風も出てきますし、寒いと困りますよね。ある程度気候が暖かくなってくると、1~2日外しても大丈夫ということなんじゃないでしょうか。冬場の問い合わせで「障子を外すと寒いから春先にしてくれ」とか、1月の問い合わせで「春先で良いんだけど」と言われることもあります。
ちなみに、お仕事の技術的な面で、注意されていることってありますか?
特にふすまなんかはそうですけど、下地処理がいるかいらないか?という判断があるんですね。やっぱり各家庭によって状態が違いますし。障子は全部剥がしますし、網戸も剥がすので良いですけど、ふすまの場合だと、状況によって下処理が必要なことがあるんです。そこの判断ですね。そこを誤っちゃうとえらい事になるので。
完璧な状態で納品するのは、お客様に長く使ってもらいたいから?
やっぱり良い仕事をしたいので。納得した上で仕事をしたいですし、それが次に繋がってくると思っています。
例えば、今回ふすまだけの仕事をいただいて、1年後くらいに「次は障子お願い」ってリピートの連絡も来る事もあります。「ちゃんとしっかり、綺麗に仕事をすればお客さんも喜んでくれるし、こうやってまた仕事をいただけるんだなぁ」という感じですよね。
あと、張りながらイメージもしていますね。お宅のイメージ。「こう張って…こういう風に……こんなイメージかなぁ」とか。でも、まずは綺麗に張るということを心掛けています。どうやったら早くできるかな、というスピードはその後。お客さんにお金をいただいている以上は、しっかり仕事をさせてもらわないと。
話は変わりますが、ふすま・障子・網戸・リフォームだと、どの仕事が一番多いのでしょうか?
ふすま・障子が一番多いですかね。リフォームも、業者さんに協力していただいているんですけど、工事の内容によっては毎日顔を出さなきゃいけない時もあります。信頼できる職人さん達ばかりなので、お任せはしているんですけど。
時期的に5月~8月いっぱいくらいまでは網戸のウェイトが高くなってきます。でも比率的にはふすまが一番多いと思いますね。だから私の場合だと、ふすま・障子・網戸が売り上げの大体6~7割くらい。あと3~4割がリフォームです。
やはり、本業はふすま・障子・網戸になるんですね。
基本的には、ふすま・障子・網戸が中心です。リフォームはあとからついてくるという感じ。リフォームって本当にボーナスみたいなものだと思っているので。
例えばふすまを4枚張り替えると3万程度の売上になるんですが、天井と壁のクロスを張り替えるとなるとたぶん7~8万円にはなります。でもリフォームはあくまでふすまや障子の後にくるものなので、必ずお仕事があるわけではない。
ふすまや障子での仕事ぶりを見てもらった上で、「じゃあクロスもちょっと見て」という方がほとんどです。
基本的には、ふすま・障子・網戸で仕事を進めていきたいと思っているので、目標も高くしています。リフォームのご提案はしますけど、あんまりガツガツしてはいないかな。何だかお客様とは世間話ばかりしている気がします。
そうなんですね。何度か話には出ていますが、集客は基本的にチラシなんですよね。なにかチラシで工夫されていることはありますか?
工夫ですか……多分私が一番工夫してないのかもしれないですけど……チラシは基本3パターンあって、お客様が選びやすいメニュー表を入れたりしています。他の店舗さんは、工夫していることもあるみたいですね。
あまりリフォームを推してはいないんですね。あくまでもふすま・障子・網戸のグランドメニュー。
一応リフォームも、ここに謳ってはいますけど。リフォームを全面的に出しているオーナーさんもいますし。私は、伺ったときにリフォームが書いてあるこのチラシをお渡しして、お仕事をもらうような感じです。
あと、今はこっちのチラシを入れていて。これは、よく残しておいてくれるんですよね。高齢の方のご自宅に行くと、これが貼ってあるのを見たり……嬉しいですね。あと二世帯住宅にされている方だと、お孫さんが「ふすまを張るなら金沢屋~」って言ってくれたり。そういうのは凄く嬉しかったです。
本部のサポートはいかがですか?
始めて1ヶ月くらいは、集客だったりとか、張り方だったりとか、すごく不安で本部の方にもよく連絡しました。あとは隣店のオーナーさんにもよく相談していましたね。でも、私自身はあんまり相談しない方なのかも。今では年に何回かオーナー達有志が集まって、お酒を飲みながら情報交換をする時もあるので、その時に情報収集することが多い気がします。
本部からはいろいろ電話もきますよ。新商品でどういうものが出たとか、どういうチラシが全国的に流行っているかとか、全国レベルで皆さんがどうやっているのかっていうのを聞けます。
話を伺っていると、オーナーさん同士の助け合いがすごく強いというか……
仙台は良いと思いますよ。チラシを入れた時に、どうしてもエリアの境界線からから出ちゃうことがありますよね。「それはしょうがないよね」とお互いに了解しているので、いさかいは起きないですし。
あと、たとえば「友達に紹介されて電話したんだけど」って問い合わせをしてくれた方がいて「住所はどこですか?」って聞くと隣のエリアだったりすることもあるんですよ。
そのときは、そのエリアの担当オーナーさんに電話して住所を教えて、お任せします。逆に、向こうからウチのエリアの方から問い合わせがあれば連絡してくれますし、そこは臨機応変にやっていますね。
今後の展望をお聞かせいただいても?
宮城野区に移転して、店舗型にして従業員を雇いたいんですよね。ちょっとイメージしていることがあって。
やっぱり、1人で仕事を回すのって、忙しいと限界があるんですよ。従業員があと1人いると全然違う。私が、午前中~夕方ぐらいまで見積もりや引き取り、納品をして、その間店舗でもう1人に張り作業をしてもらう。そうすると、もっと早くお客さんのところを回れるし、もっと早く対応、納品できますよね。どうしても1人だと1日の仕事量が限られてきちゃうので。
自宅で開業・一人で出来るという点から「一人でやっていきたい」というオーナーさんの方が多い中で、上昇志向があり目標が明確なのですね。
自分自身初めはそう思ってました。1日の動きって、午前中~午後3時ぐらいまでずっと外に出てるんですよ。4~5時位に戻ってきて、そこから張替え作業に入るんですね。そうすると作業が終わるのが夜10~11時位。
お客様は一日でも早く持ってきてという方がほとんどなので、いま納品に3~4日かかっているのを2~3日でいければ最高ですよね。
あとは毎月の売上目標を立てているんだけど、一人だとどうしても間に合わなくて次の月にまたいじゃう時もあるんです。出来るだけ自分のスケジュールにも合わせて、お客さんの要望に応えられるように……と思うと、もう一人いたほうが良いかなと感じています。
最後にもう一つだけ伺いたいのですが、ものすごい大失敗をした事はありますか?
大失敗ですか。大失敗はあります。まず納品した際に破いちゃったっていう……障子で2回ぐらいありますね。
あとは、ふすまが全然外れなくて、仕事を諦めたこともありました。一応、外す時に鴨居と敷居にジャッキをあてて、グーッと少し浮かせてから抜いたりするんですけど。その家は築年数が古くて、屋根瓦の重みでかなり全体的に下がっていて、ふすまが開け閉め出来ない状態だったんですよ。
今思えば大工さんを呼んで、意地でも外して、鴨居や敷居を付け直すという考えはあるんですけど、あの時は全く対応することが出来ませんでした。
似たような話を、ほかのオーナーさんの所でも聞きました。
あと手を切って血だらけになったり。上の欄間ってあるじゃないですか、小さい障子。あれをグッグッグッと4枚入れて、次に下の大きい障子を4枚入れるんですけど。下の障子を入れようと思ったら、鴨居の所が赤く点々となっているんですよ。「あれ?こんな塗料の跡あったかな?」と思っていたら、お客さんの方が気付いて「あれ? お兄さん血が出てるよ」って。ハッとして見たら血が……
「すみません!」って、一応ウェットティッシュとかで拭いたんですけど、下の障子についたシミがなかなか取れなくて。カンナで削ってペーパーをかけて一応綺麗にはしたんですけどね。ご迷惑をかけたという事で、見積もりよりも値引きさせてもらって、丁重に謝罪をしてなんとか事無きを得ましたが。
皆さんそれぞれご苦労されていらっしゃいますね。
あると思いますよ。開業して間もないオーナーさんも、これから失敗されるのだろうなと思います。でも、失敗して本当に覚えていくので。つくづくそう思いますね。
だからわたしは、朝行く前に家の仏壇に手を合わせて、一呼吸おいてます。納品にしても引取りにしても、何事も無いように。「慌てず、焦らず、しっかり対応していく」というのは、毎日手を合わせながらすごく意識しています。